『火の粉』(著:雫井脩介)の感想
「豊島?強いよね」で将棋界外でも有名となった豊島将之七段の2008年当時の愛読書。*1
そもそもめったにミステリーどころかフィクション*2を読まないので新鮮でした。アマゾンカスタマーレビューが86件とのことで、恐らく有名な作家、作品なのでしょう。フィクションの本を検索することすらなかったので、この経験のきっかけをくれた豊島七段には感謝。
久々の物語なので読み始めは少々辛かったですが、後半は煽り文句通りスリリングでした。その後半を読んでて思い起こされるのは
「世界のどこを探したって、悪意を持とうと願う人はいないのです。」*3
という一文。*4誰が悪いとは言い切れない。互いが互いに影響しあい生まれる悲劇が繰り広げられ迎える結末。読んでいて「責任」という概念を自分自身問いなおす必要があるな、と思いました。「責任」は人が作った概念なので必然的に観念的ですが、しかし一方で「責任」はひとりひとりに求められ、またそれが当然かのようになっています。言語ゲーム的理解*5で良いじゃないか、と思っていた時期もありましたが、しかしこの小説でも日々の生活でも「責任」が人々の振る舞いと一致しているか、というとそうではない。「責任をとれ」と言われても何を指されてるかよくわかりません。「責任」はどこにあるのでしょう。*6