Ts日記

帰国子女だった人

International Baccalaureate(国際バカロレア)の難易度

 私がIB EXAMを受けてからもう一年半が経つ。本試験とは別に課されるTheory of Knowledge(TOK)やExtended Essay(EE)各科目のInternal Assessment(IA)はあるものの、IB Scoreはほとんど五月か十一月に行われるFinal Examで決まるので、Mock Exam(模擬試験)で悲惨な点を取った私には試験前の二ヶ月がとても辛かった。週に一回は試験に失敗する夢をみていた気がする。

 この「勉強しなかったこの愚かな私」を置いておいても、「IBがとても難しく大変なものだ」というのは、インターナショナルスクールに通う子供を持つ保護者の間では共有されている感覚といえるだろう。一年半前の当事者だった私は全くその通りだと思っていたが、IB後の日本の大学受験を終えた今の私は少し違う考えを持っている。

 IBの難易度や大変さを語るとき、それが

  1. IBを取得する
  2. 高得点を目指す

のどちらかなのかははっきりさせておいたほうが良い。2については人それぞれとしか言えない部分が強いので1の結論を出してみたい。

 

まず大変さについて。一般の日本の高校(このくくりも実はよりけりで、例えば超進学校はとても緩く自称進学校はきつい、などなど)と比べとても大変です。二年の間に五十回はレポート出すことになりますし、学内試験も日本と同程度あります。大学受験前だけ頑張れば良い日本の学生に比べIB生は二年間一定以上の緊張感が求められます。

 次に難易度。

The IB Diploma Programme StatisticalBulletin

http://www.ibo.org/facts/statbulletin/dpstats/documents/may_2012_statistical_bulletin.pdf (pdf注意)

p36に学生の点数分布が示されている。八割弱の生徒がDiplomaを取得している。倍率にして考えれば1.3倍の試験である。問題なく英語が喋れ書ける生徒ならなんてことはないだろう。しかし、純粋な日本人の場合にこの1.3倍はどのような意味を持つだろうか。実際にそうであった私を具体例に考えてみたい。

私が選択した科目は

  • Mathematics HL
  • Physics HL
  • Chemistry HL
  • Japanese A1 SL Self-Taught
  • English B2 SL
  • History SL

私の場合理系科目に頼ることができた、すなわち言語の難しさより内容そのものが問題になる科目を多く取っていたので、高いレベルの英語力が求められたのはEE,TOK,History SLぐらいであった。しかもこのうちEEとTOKは長い期間かけるカリキュラムなので、学校の先生や家庭教師に校正してもらうチャンスがあった。

私のように理系科目に頼れるのならIB取得は非英語ネイティブの日本人にもそう難しい話ではない。ではそうでない、六科目目にGroup3やGroup6から選ぶ学生にとってはどうなのだろうか。ここからは類推も含まれるので注意していただきたいが、Final Examで求められるEssay Writingは回数をこなせば最低でも4を取るレベルに到達できます。IBの教科書は平易であることに気をつけていますし、授業で分からない事もネットで調べれば分かる程度の深さなのでなんとかなります。

結局のところ、真面目に課された宿題やEssayをきちんとこなせるか、という実に陳腐なところに結論はあるようです。

IB(国際バカロレア)の家庭教師

文部科学省がIBを日本に導入する方針を固めています。そのことはIB卒業生としてうれしく思います。しかし、Googleで「IB 家庭教師」と検索してもスパムまがいのサイトしか引っかからない現状に絶望しました。そこで、なら、私がおそらく日本では初めてとなる「IB家庭教師」になろうと決意しました。

概要は以下のとおり

対応科目:Mathematics HL/SL Physics HL/SL Chemistry HL/SL (Extended EssayやTOKは生徒の要望にしたがい対応)

対応範囲:要相談。東京近辺であればなるだけ対応します。遠方の場合はSkypeでの授業も検討いたします。

言語:基本的に日本語で授業をしたいと考えています。というのは、そもそも英語ができる子は学校の先生に頼れば大丈夫だからです。IBを英語がネイティブ並でないために苦労している子の手助けをしたい、というのが私の考えです。もちろん専門用語などは英語で一通り教えます。

時給:相場が分からないので要相談。お試し期間を設けるなどの提案には対応する予定です。

連絡先:shushakura☆gmail.com (☆を@に変換)

理系帰国子女の大学入試その4〜東京大学を目指す〜

理科二類で合格しました。(ほぼ特定される)

入試を振り返ると東京・早稲田・慶応・東京理科全て受かり充実したものとなりました。以下は半ば自慢になりますが、どうすれば帰国子女が東京大学に受かるのか、自分なりに考えてみます。

 

一般生と帰国子女の違い

理系帰国子女は初期条件が苦しいです。それはIBを含め現地の勉強が大したことない、また難関国立の受験問題に触れる機会がなく、見てもわけが分からなくなるです。*1私の場合まともな受験勉強は帰国後、6月以降で間に合っていましたが、あまりオススメはできません。やはり帰国前の、前年の夏休みぐらいからは始めたほうが得策です。ではどのような勉強をしたらよいか。帰国生と言っても地域によって授業の進捗度がまちまちです。まず自分がどの程度知っているのか、その整理が大切です。今回は私が経験したIBとSATで考えます。

IB

数学...簡単な微分方程式、外積、正規分布など概念習得については日本の高校を超える。しかし残念ながら出題される問題のほとんどはセンター未満である。ベクトルは習うが、問題の趣が全く異なるので別物と考えたほうがいい。微分積分も日本の受験業界では当たり前となっているテクニックを全く知らない状態になるので、日本の参考書、問題集で頑張るように。

物理...optionで相対性理論や宇宙物理を学べるが、残念ながら日本での二次試験にはかかわりがない。反発係数をやらなかったり、相対速度を利用する問題があまり出なかったり穴が多いし、そもそも試験では簡単なモデルしか問われないので、7をとれたとしても日本の物理も安心、とはならない。日本から問題集を取り寄せ、こつこつ経験を積もう。

化学...ギブスの自由エネルギーやsp3混成軌道などを取り扱い、ところどころ日本のカリキュラムを超えていたりする。だが日本の受験問題には関係のない話。難関国立でおなじみの構造決定が全く出題されないし、理論化学はただの計算問題であることが多い。あと物質名の知識が圧倒的に足りない。K2Cr2O7やCu2O、IB受験生からすれば「なにいってんだこいつ」状態かと思う。しかし日本での受験には必要なので、ちゃんと日本の参考書を読み込もう。

 

SAT

理系科目全般について

試験対策なにもやらずに、Mathematics2・Physics・Chemistryの平均点が760になったので、IBできるなら問題ない。SATの数学はどうしようもなくレベルが低いので少なくともAPぐらいはやったほうがいい。*2IB生に比べれば楽でしょうから日本の受験勉強に力を入れましょう。あと、あまり現地の塾を頼らないように。

*1:文系であれば日本語と英語、そして塾で左翼イデオロギーを学べばよい。

*2:日本の大学はAPを評価しないようですが・・・

理系帰国子女の大学入試その3〜面接〜

東大の面接が終わり、受験の日程は全て消化しました。あとは結果を待つのみです。*1今回は帰国子女入試ではほぼ必ず設けられている面接について書きます。

まず、私が経験したそれぞれの大学でどうだったか。

 

慶応

唯一(?)真面目に面接をやる大学。学科試験が無いので面接でどうにか判断しないといけないのでしょうがない。数学・物理・化学のそれぞれの科目での口頭諮問と総合での一般的な面接(志望理由とか)をそれぞれ15分前後やりました。口頭諮問で聞かれる内容は基礎的なレベルで、(日本の)教科書をひと通りわかっていれば問題ありません。一方総合面接は、一人圧迫してきやがる方がいらっしゃって「慶応は受かってもいかない」と心に誓いました。*2私の年から、いきなり英語で質問されるようになってるようなので、心の準備はしておきましょう。

早稲田

(あくまで私が受けた学部学科の話)志望理由すら聞いてこなかった。フリーパスでした。早稲田は偏差値偽装しないといけないので、帰国生をなるたけ取らないとまずい、という事情があったのでしょう。

東京理科

(あくまで私が受けた学部学科の話)志望理由を聞かれた後は、滞在国での経験や大学に入ってやりたいこと、などテンプレな質問が続きました。恐らく学科の教授は全員出席されていたはずです。しかしあまりやる気もないようで、「どうせ通すしかないんだろ」といったご様子。しかし、来年からは入試制度自体が変わるので、面接の方針も変わるかもしれません。

東京

志望理由を聞かれた後は教授陣とのフリートークに突入する。私の場合は「化学系、特に薬学に行きたいです☆」と言ってしまったので、光学異性体について5分ぐらい話すことに。あとは志望理由について少し突っ込まれるぐらい。教授の方々も平日の朝に駆り出されて面倒なのでしょう。なごやかに話をして終了しました。

 

 次に志望理由はどうすれば良いか、私も分かってなかったりしますが、考えてみましょう。まず帰国生である以上、「なぜ日本に帰ってきたのか」という問いは常につきまといます。それに対する一つ楽な答えは「貴大学が日本にあったから」です。ある種反則技ですが、なにも思いつかなければこのネタを使いましょう。私の場合はそれに加え「グローバルな人材であるためには、日本のことをまずよく知る必要がある」といった類のことをいいました。

 次に、学部を志望する理由です。一番良いのは、自分の人生経験を踏まえて「この学部しかないっしょ→」という流れにする方法です。人生経験について「それ嘘なんじゃないの?」とはさすがに面接で問えませんからね。それが使えそうにないなら、ホームページなどをみて、学部の指針などをみて好みな点を見つけましょう。

 「やることないから大学に行くんだろ、いい加減にしろ!」と私は思っていましたし、そう思ってる受験生は多いかと思います。(具体的に目標があれば専門学校行ったりしますからね)しかし、面接がある以上志望理由ぐらいは取り繕わないとまずいです。帰国する前でも、ぼやんと考えてみてはいかがでしょう。

*1:合格

*2:実際受かって蹴りました

理系帰国子女の大学入試その2〜早稲田まで・早稲田から〜

医学部・薬学部志望の場合を除けば、ほとんどの学生は早稲田大学を受けることになります。*19月に早稲田大学の合格が決まれば気が楽でしょう。また、早稲田の試験はその後にある国立入試に耐えられるかの試金石となります。よって、早稲田を仮目標にするのはほとんどの学生にとって良い選択となります。

 

では早稲田に合格するには・その後の国立に挑戦するには、どのような勉強をすればよいか。私なりの考えを書きます。

 早稲田まで

私は海外在住の間数学の赤チャートを除きほとんど日本の受験勉強に取り組みませんでした。それでも数学ではほぼ満点取れたので、学校での成績がそこそこ良いなら、現地の勉強+3ヶ月の塾での詰め込みで十分間に合うはずです。

 

早稲田から

「早稲田大学に受かり数ヶ月、私は受験勉強の無意味さに悩まされた。」(体験談)    どれだけ高い志を持っていても、早稲田大学というブランドを手に入れると、「あれ、早稲田で問題なくね?」という心が芽生えるものです。なにより私は東大受験しながら、「早稲田でなんの問題があるんだ」と自問自答しました。しかし、現実をみればトップ国立>早稲田の構図はあるので、客観的には頑張ったほうがよいです。頑張れとしかいえない。ではどのような勉強をすればよいか。河合にしろ駿台にしろ講師陣は相当できる方々のはずなので、授業についてこれれば国立受験生に恥じないぐらいのレベルにはなります。しかし、受かるかどうか、その領域に到達するには帰国前から頑張ったほうが良いと思う。特に数学についてははっきり言える。トップの一般生がやる『大学への数学』や過去問にきっちり触れよう。私はこの本に受験三週間前に出会い、感動と後悔を覚えた。運良く東大本試験では二問完答できたが、この本を知っていれば自分の数学のレベルは三段違っただろう。

大学への数学』をやろう→結論

*1:早稲田大学は一次審査がゆるく、大体の学生が本試験を受けられる。また、慶応大学はIBやSATの成績でほぼ決まるので、現地で頑張れとしかいえない。

理系帰国子女の大学入試 その1 〜志望大学とIBの科目選択〜

 帰国子女についてのブログや書籍は探せばいくらかあるものですが、対象を理系に定めたものはほとんどありません。理系帰国子女はどうしても情報不足になってしまい、間違った認識を持って受験に挑みがちです。先日東大筆記試験が終わり一段落ついたので、理系帰国子女がどのような受験生活を送るのか書いてみます。*1

 

目標設定

どの大学に行きたいか、ちゃんと決めたほうが良いです。私のように「とりあえず偏差値高いとこー☆」とか言ってると志望学部ころころ変えたり迷走するから要注意。理系志望にとって具体的な選択肢は医学部を除けば

  1. 早稲田
  2. 慶応
  3. 東京理科*2
  4. 北海道
  5. 東京
  6. 大阪
  7. 東北
  8. 九州
  9. 東京農工

あたりになります。それぞれの大学に向けての具体的な戦略は後日書きます。

IBの科目選択

SATの場合は苦労はしても悩むことはないでしょう。頑張って単語覚えてください。*3一方のIBは様々な選択肢が考えられ11年生になるとき色々悩みます。私の経験が頼りになってしまいますが、指針を述べておきます。さきほど羅列したような大学を志望する場合、MathとPhysics, Chemistry, Biologyの2つでHLを取ることが望ましいです。このぐらいはこなせないと*4特に国立大学受験のときに辛いです。一方で文系科目はなんでも良いでしょう。私はHistory SLを取り、過剰な努力を強いられたのでEconomics SLを推奨しておきます。また「English B SL/HLで良いのか?頑張ってEnglish A2 SLを取らないと評価してくれないんじゃないか」と私も悩みましたが、率直に言って大学の教授たちはA2とBの違いなぞ知りません。English B SLで6の私が東大通ったので、どうせ理系科目と合計点*5でしか見てないのだと思います。

*1:早稲田大学二学部・慶応大学・東京理科大学全て合格したので成功例として参照は可能だと思います。

*2:2012年度までは早慶の滑り止めとしての機能を果たしていたが、翌年度から入試日程を変更するという。私を含め合格した子が大体他大学に行ってしまうので、しょうがないといえばそうだが、受験生にとっては安息の地だったので残念。

*3:参照としてhttp://blogs.yahoo.co.jp/toyomatsumura

*4:大変なのは知っている

*5:私は39点

『火の粉』(著:雫井脩介)の感想

「豊島?強いよね」で将棋界外でも有名となった豊島将之七段の2008年当時の愛読書。*1

そもそもめったにミステリーどころかフィクション*2を読まないので新鮮でした。アマゾンカスタマーレビューが86件とのことで、恐らく有名な作家、作品なのでしょう。フィクションの本を検索することすらなかったので、この経験のきっかけをくれた豊島七段には感謝。

久々の物語なので読み始めは少々辛かったですが、後半は煽り文句通りスリリングでした。その後半を読んでて思い起こされるのは

「世界のどこを探したって、悪意を持とうと願う人はいないのです。」*3

という一文。*4誰が悪いとは言い切れない。互いが互いに影響しあい生まれる悲劇が繰り広げられ迎える結末。読んでいて「責任」という概念を自分自身問いなおす必要があるな、と思いました。「責任」は人が作った概念なので必然的に観念的ですが、しかし一方で「責任」はひとりひとりに求められ、またそれが当然かのようになっています。言語ゲーム的理解*5で良いじゃないか、と思っていた時期もありましたが、しかしこの小説でも日々の生活でも「責任」が人々の振る舞いと一致しているか、というとそうではない。「責任をとれ」と言われても何を指されてるかよくわかりません。「責任」はどこにあるのでしょう。*6

*1:出典:http://silva.blogzine.jp/blog/2011/01/post_a978.html

*2:ただしライトノベルを除く

*3:リトルバスターズ能美クドリャフカ

*4:どれだけ偏っているんだ。

*5:「責任」という言葉は人々の振る舞いにより成り立つ、という考え方。

*6:日本語の運用をみる限り責任=償いとは言えるかもしれない。